掛引かけひき)” の例文
焼きたがる女に違いない。前の生活で質屋の使いや、借金の断りや、家賃の掛引かけひきなんぞには並々なみなみならぬ苦労を積んで来たのであろう
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
それはそうに違いない、川中島の掛引かけひきは軍記で読んでも人をうならせる、実際に見ておいたら、どのくらい学問になったか知れぬ。
しきりに侍と亭主と刀の値段の掛引かけひきをいたして居りますと、背後うしろかたで通りかゝりの酔漢よっぱらいが、此の侍の中間ちゅうげんとらえて
「あんたと余計な掛引かけひきをするまでのことはないから、あっさり言いますが、一人あたり百ルーブリですな。」
掛引かけひきみょうを得たるものなれども、政府にてはかかるたくらみと知るや知らずや、財政窮迫きゅうはく折柄おりから、この申出もうしいでに逢うてあたかわたりにふねおもいをなし、ただちにこれを承諾しょうだくしたるに
旅にれて掛引かけひきが多く、その上おりおりは法力をかさに着て、善人たちをおびやかした故に、「高野聖に宿やどかすな、娘取られて恥かくな」などという、ことわざまでもできたのである。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
たとえば饑饉には救恤きゅうじゅつの備えをなし、外患がいかんには兵馬を用意し、紙幣下落すれば金銀貨を求め、貿易の盛衰をみては関税を上下する等、俗言これを評すれば掛引かけひきの忙わしきものなるがゆえに
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
殊にラサの下等社会及び中等社会の婦人は、商売するのが自分の習慣のようになって居るものですから、何でも商売の掛引かけひきでやって居る。自分が夫を定むるにもやはりそういうふうである。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)