掛値かけね)” の例文
そのような大小不揃ふぞろいの物があるわけはないから、すなわちこれも又聞またぎきの場合の掛値かけねであったことを、想像しえられるのである。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
今度はもう掛値かけねなし、一日もからないと云う日になった、と云うのを私は政府の飜訳局ほんやくきょくに居てつまびらかしって居るからたまらない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
亭「へい、有難う存じます、お掛値かけねは申上げませんが、只今も申します通り銘さえございますれば多分の価値ねうちもございますが、無銘の所できん拾枚でございます」
向うものが運命なら運命のぎりぎりの根元のところへ、向うものが事情なら、これ以上割り切れない種子のところに詰め寄って、掛値かけねなしの一騎打いっきうちの勝負をしよう。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
二十日に要るのですけれど(日数に於いて掛値かけねあるが如し、注意を要す)おそくだと、私のほうでも都合つくのですが(虚飾のみ。人を愚弄ぐろうすること甚しきものあり)
(新字新仮名) / 太宰治(著)
「毛頭、お掛値かけねはございやせん。よろしくばお求め下さいやし、三銭でごぜいやす。」
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは水上滝太郎みなかみたきたらう君の「友はえらぶべし」の中の一節である。僕はこの一節を読んだ時に少しも掛値かけねなしに瞠目だうもくした。水上君の小説は必ずしも天下の女性の読者を随喜ずゐきせしめるのに足るものではない。
変遷その他 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
清君の腕前は、造船技手として、掛値かけねなしに立派なものである。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
「さあ、掛値かけねは言わんぞね。これで……さあ——」
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)