捲起まきおこ)” の例文
日本の言文一致の先駆者(あるいは創始者)として文壇の風雲を捲起まきおこした一代の才人の終焉しゅうえんとして何たる悲惨の逸事であろう。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
同じ港町でも、越後ゑちご出雲崎いづもざきとこの玉島とでは、ずゐぶん違つてゐた。越後の海は、冬、暗い雲にとざされ、北から来る風が波を捲起まきおこした。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
大本教おおもときょうが盛りだした時以上に天理教流行の時があった。一体下町で、いつも景気のよい宗旨は日蓮宗だが、時々新らしい迷信が捲起まきおこることがある。
で、吉次の計画は、極めて簡単な一投石で、その目的の波瀾はらんを、中央に捲起まきおこすことができるものとして——平泉のやかたから黙約を得ていたのだった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天下の富豪大倉喜八郎氏が百何十万円とかを投じて賀筵がえんを張る。そのために支那から俳優を招くという事が一般に伝わると、真剣な意味で非常な輿論よろん捲起まきおこした。
板に上ると、その機会はずみに、黒雲を捲起まきおこして、震動雷電……
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すさまじい激闘が捲起まきおこされたとき、それと同時に、荒木村重の家族や女たちばかりの住んでいる一曲輪くるわのものは、たれも彼もみな裸足はだしで、着のみ着のまま
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
華やかなあらし捲起まきおこしたこの新夫婦、稲舟美妙の結合は、合作小説「峰の残月」をお土産みやげにして喝采かっさいされた。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)