振出ふりだ)” の例文
熱で渇いた口に薫りの高い振出ふりだしをのませ、腹のへったものの前に気の利いた膳をすえ、仕事に疲れたものに一夕の軽妙なレビューを見せてこそ利き目はあるであろう。
そん時に漂流端舟ながれボートい上ってハンカチを振ったのが彼小僧あいつのSOSの振出ふりだしだそうですがね。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
餓鬼がきの折から手癖てくせが悪く……じゃあ大変だが、まあっとばかりペンペンを仕込まれたのが因果で、ず小田原を振出ふりだしに、東海道を股にかけという程でもございませんが
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
病者ばうざの心地や悪しからむ、振出ふりだしてふ薬飲ませばやと、常にくすりあはするかたに往くに、こはいかに棚落ちて箱どもの薬ちり/″\になり、百味箪笥といふものさへ倒れぬれば
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
それは今日ひるすこし前、例の事件について調べることがあってむかえのために警官をキャバレー・エトワールへ振出ふりだしてみると、雇人やといにんは揃っているが、主人のオトー・ポントスが行方不明であるという。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こゝろざみやこ振出ふりだしの、瓜井戸うりゐど宿しゆくいそいだ。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)