-
トップ
>
-
振仰
>
-
ふりあお
種彦は何という
訳もなく立止って梢を
振仰いだ。枯枝の折れたのが乾いた木の皮と共に
木葉の間を滑って軽く地上に落ちて来る。
婦人は
炉縁に
行燈を
引附け、
俯向いて
鍋の下を
燻していたが、
振仰ぎ、鉄の
火箸を持った手を
膝に置いて
「これは?」と驚いて
振仰ぐ如来の顔から、今までの微笑が消えた。
だが、やがて
振仰いだときにお蘭はびっくりして
叫んだ。
薄暗い
中に
振仰いで見るばかりの、
丈長き女の
衣、低い天井から桂木の
背を
覗いて、
薄煙の
立迷ふ中に、
一本の
女郎花、
枯野に
彳んで
淋しさう、
然も
何となく
活々して、
扱帯一筋纏うたら