よん)” の例文
旧字:
誰にでも翻弄ほんろうされると、途方に暮れる私だから、よんどころなく苦笑にやりとして黙って了うと、下女は高笑たかわらいして出て行って了った。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
自選であるか、自詠であるかどうかは知らないが、それにしても最初の句の「ともかくも」とはよんどころなくという意味も含んでいる。仕方がないからとの捨鉢すてばちもある。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
二三度呼ばれてよんどころ無く、薄気味わるわる降りてみれば、お政はもウ帰ッていて、娘と取膳とりぜんで今食事最中。文三は黙礼をして膳に向ッた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
不平で不平でたまらないが、一々弁解もして居られんから、私は誠によんどころなく不承々々に小狐家の書生にされて了って、そうして月々食料を払っていた。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
よんどころなくほたほたしながら頭をでて遣るだけで不承ふしょうして、又歩き出す。と、ポチも忽ち身をくねらせて、横飛にヒョイと飛んで駈出すかと思うと、立止って、私のかおを看て滑稽おどけ眼色めつきをする。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)