なり)” の例文
折角せっかくお美乃が嫁入りするんだぜ、そのなりで高砂やアでもあるめエ。——これで間に合わなきゃ、またなんとかするぜ」
衣服もわざと同一おなじなりで、お縫が附添い、身を投げたのはここからという蓬莱橋から、記念かたみの浴衣を供養した。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そんならもう、絶えず主人から、……あら、どうしませう……あたくし、こんななりをして……。
職業(教訓劇) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
武士さむらいと云うものは敷居を跨ぐと敵のあるものでのう。鎖帷子、ほうら鎖頭巾、どうじゃ、こうちゃんとしたなりをするといい男だろうがの、今に喧嘩でもしてみろ、三人や五人ならおくれはとらぬぞ。
鍵屋の辻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
おかるになりしは岩井玉之丞とて田舎芝居の戯子やくしやなるよし、すこぶなり。由良の助になりしは旅中りよちゆう文雅ぶんがもつてしるひとなり、年若としわかなればかゝるたはふれをもなすなるべし。常にはかはりて今の坂東彦三郎にたり。
「いいじゃねえかなりなんぞそのままでも」
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
折角せつかくお美乃が嫁入りするんだぜ、そのなりで高砂やアでもあるめエ。——これで間に合はなきや、又何んとかするぜ」
おかるになりしは岩井玉之丞とて田舎芝居の戯子やくしやなるよし、すこぶなり。由良の助になりしは旅中りよちゆう文雅ぶんがもつてしるひとなり、年若としわかなればかゝるたはふれをもなすなるべし。常にはかはりて今の坂東彦三郎にたり。
なりは至つて粗末で、黒つぽい袷の上に、何やら羽織つて居ります。女と見破られ度くなかつた爲でせう。
「善いも惡いもありやしません。五年といふ長い間、このなりで下男同樣に働かされました」
「いや、田沼殿のひきで日の出のいきおいと聴いた秋月九十郎殿が、そのなりは何んとした事だ」
着て居た。あのなりぢや穴へ潜れない、手を洗つたのは一應臭いやうだが、本當に穴に潜つた奴なら、手を洗ふとかへつて疑はれるくらゐのことに氣が付くだらう。曲者は手を洗はない奴だ
着ていた。あのなりじゃ穴へ潜れない、手を洗ったのは一応臭いようだが、本当に穴に潜った奴なら、手を洗うとかえって疑われるくらいのことに気が付くだろう。曲者は手を洗わない奴だ
「さァ、出かけよう——と言ったところで、そのなりじゃ町は歩けまい、お静」
「さア、出かけよう——と言つたところで、そのなりぢや町は歩けまい。お靜」
「年に二兩や三兩の給金ぢや、そのなりは出來ない筈だが」
「でもこのなりぢや行けませんよ、親分」