)” の例文
それを実地に役立てさえすれば、大きい錠前をじ切ったり、重いかんぬきを外したりするのは、格別むずかしい事ではありません。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
するとお宮は、「おうこわい人‼」と、呆れたようにいって蒲団の端の方に身を退いて、背後うしろじ向いて私の方を見た。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
じつけられた辮子はまがきの方へと引張られて行って、いつもの通りそこで鉢合せが始まるのだ。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
いかめしい碍子がいしじこんだりしたすえに、真黒で四角の変圧器まで取付けていった。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ああいえばこう——じまがったことのみいうので、仕方がねえから、一先ず、陣を退き、今夜あらためて策を立てて、あいつを誰も知らねえところに、押し込めてしまったゆえ
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
室のちょうど真ん中に、ひどくじ曲ってまだぴくぴく動いている一人の男の体が横たわっていた。二人は爪先を立てて近寄り、それを仰向きにすると、見えたのはエドワード・ハイドの顔であった。
僕はやっと体をじまげ、オペラ・グラスの度を調節した。同時に又突然向うのボオトのぐいとあとずさりをする錯覚を感じた。
湖南の扇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
もう他の女はじ向いて見る気にもならなかった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
下人はとうとう、老婆の腕をつかんで、無理にそこへじ倒した。丁度、にわとりの脚のような、骨と皮ばかりの腕である。
羅生門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
下人はとうとう、老婆のうでをつかんで、無理にそこへたほした。丁度、とりの脚のやうな、骨と皮ばかりの腕である。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
すると老紳士は、自分も急に口ざみしくなったと見えて、体を半分うしろの方へじまげると、怒鳴りつけるような声を出して、「おい、ウイスキイを一杯」と命令した。
西郷隆盛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
大井おおいは急に調子を下げて、嘲笑あざわらうような表情をしたが、やがて帳場机の方へ半身をじ向けると
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
保吉は少しからだげ、向うの窓の下をのぞいて見た。まず彼の目にはいったのは何とか正宗まさむねの広告を兼ねた、まだ火のともらない軒燈けんとうだった。それから巻いてある日除ひよけだった。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
新公は打たれても、引つ掻かれても、遮二無二しやにむにお富をぢ伏せようとした。しかし何度か仕損じた後、やつと彼女に組み付いたと思ふと、突然又はじかれたやうに、水口の方へ飛びすさつた。
お富の貞操 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
若者は襟を取られたまま、斑竹はんちくの笛をふり上げて、横払いに相手を打とうとした。が、素戔嗚は手もとをゆるめるまでもなく、遊んでいた片手を動かして、苦もなくその笛をじ取ってしまった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そうしてまず造作ぞうさもなく、老婆をそこへじ伏せてしまった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)