手枷てかせ)” の例文
手枷てかせ足枷をして、面前にひき出し、「汝の違言に依って、北条家はほろんだではないか。主家を亡して快きか」と、ののしった。
真田幸村 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
この際、彼の取るべき方法は、妻のお民と共に継母をなだめて、目に見えない手枷てかせ足枷あしかせから娘を救い出すのほかはなかった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
つまりここでは生活を雁字搦がんじがらめにして、手枷てかせ、足枷、首枷をはめたうえ天床てんじょうつるし上げたというかたちらしい。
かれらはうけたまわって立ち去ったが、やがて喬生と麗卿と金蓮の三人に手枷てかせ首枷くびかせをかけて引っ立てて来た。
世界怪談名作集:18 牡丹灯記 (新字新仮名) / 瞿佑(著)
わが身が手枷てかせ足枷あしかせのじゃまとなって、どれだけ栄三郎さまのおはたらきをそいでいることか……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
やがて喬生と麗卿と金蓮の三人に手枷てかせ首枷くびかせをかけて引っ立てて来て、さらに道人の指図にしたがい、むちしもとでさんざんに打ちつづけたので、三人は惣身に血をながして苦しみ叫びました。
これが次の文化の手枷てかせ、足枷となるのもやむを得ない自然の因果といえよう。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
支那や朝鮮にあるという手枷てかせ、足枷があるのは、一種の標本かとも思えた。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
手枷てかせ足枷あしかせ團子だんごにされて
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
幾時代かの伝習はその抗しがたい手枷てかせ足枷あしかせで女をとらえた。そして、この国の女を変えた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今の未決監みけつや監獄なぞには。影も見せない道具の数々。鉄の鎖に袖無し襯衣シャツだよ。手枷てかせ、足枷。磔刑はりつけ寝台じゃ。小窓開いた石箱なんぞが。ズラリズラット並んだ光景ありさま。どんな極重悪人とても。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのあとへ楊厚ようこうという人が赴任した。ある日、楊が役所に出ていると、数人の者が手枷てかせや首枷をかけた一人の囚人めしゅうどをつれて来て、なにがし村の一件の御吟味をおねがい申すといって消え失せた。
「いかにも」隊長は、きっとなって答えた。「拙者の計いで、各々方に、かほど自由を与えてござるのが分からないのか。錦旗に発砲した朝敵じゃほどに、手枷てかせをかけても言い分はないはずじゃ。 ...
乱世 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
我れわれが早くに竈へ火をかけたればこそ、追手も油断して帰ったが、さもなければ真っ先に竈の中をあらためて、彼らは勿論、我れわれも今ごろは手枷てかせや首枷をはめられているであろうと言う。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
手枷てかせ足枷あしかせがそこに降蔵らを待っていたのだった……
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
背を打たせること二十じょうの後、首枷くびかせ手枷てかせをかけて獄屋につながせ、明日かれを殺すことにしていると、その夜のうちに劉は消えるように逃げ去って、誰もそのゆくえを知ることが出来ませんでした。