へん)” の例文
彼ハ傾国ノ色絶世ノ技アルニ非ラズトイヘドモ、繊繊タル女手ノ力ヲ以テ大ニ巨閣高楼ヲ墨水ノ西ニ営ミ、へんシテ有明楼トイフ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
婦人は普通の俗字だも知るはまれにて漢字からもじ雅言がげんを知らず仮名使てにをはだにもわきまへずへんつくりすらこころ得ざるに、ただ言語ことばをのみもて教へてかかするわが苦心はいふべうもあらず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
文字のへんがなくなったり、はなはだしい時には、一字丸ごと埋まってしまうような場合もあるのですが、一つ試しに、嵐村次郎とある上半分から、風という字をって御覧なさいまし。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ね、『鮭』——魚へんけいという字を書くんだよ、これはフグという字なんだよ。ところが藪の先生、それを『しゃけ』と読んでしまったんだ、魚扁に生、それはサケともいうし、シャケともいう字なんだ。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
茶館ちやくわんには「清潤甜茶せいじゆんてんちや」のへんがありにほへる処女をとめ近づききた
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
すなわチ都城ヲ距ルコト五、六里、丹羽ノ里ニ就イテ荘一区ヲ買フ。地ヲめぐツテ松ヲヱ、亭ヲソノ中ニ築キ以テ歌哭かこくノ地トナス。へんシテ万松亭トイフ。亭中ニ棋一枰いっぺい、書千巻ヲ蔵ス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
段とへんもつくりも異なるを混同して書く人多し。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
切の字のへんは七なり。土扁に書く人多し。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)