所好すき)” の例文
色々の事に遮られて何日いつとはなく中絶してゐた英語の独修を続ける事や、最も所好すきな歴史を繰返して読む事や、色々あつたが
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
私の祖父じじいつり所好すきでして、よく、王子おうじの扇屋の主人や、千住せんじゅの女郎屋の主人なぞと一緒につりに行きました。
夜釣の怪 (新字新仮名) / 池田輝方(著)
祖父じじいは私共の知っておりました時分でも、猫は大嫌いなんで御座ございます。私共が所好すきで飼っておりましても
「ああしんど」 (新字新仮名) / 池田蕉園(著)
「貴方は不断から雨が所好すきだつたから、きつとそれで……いとま……ごひに降つて来たんですよ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と、所好すきな貸本の講談を読みながら、梁山泊りょうざんぱく扈三娘こさんじょう、お孝が清葉をののしる、と洩聞もれきいて
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何も彼もちゃんとなっているのを見るのが所好すきなものであるからである。
さうして、お前はせんの内は子供が所好すきだつた癖に、自分の子は欲くないのかね
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
投網打とあみうち帰途かへりに岩鼻の崖から川中へ転げ落ちて、したたか腰骨を痛めて三日寝た、その三日だけは、流石に、盃を手にしなかつたさうなと不審がられた程の大酒呑、酒の次には博奕ばくち所好すき
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
亡父おやじは馬の家じゃなかったけれど、大の所好すきで、馬術では藩で鳴らしたものだそうだ。それだから、私も小児こどもの時分稽古けいこをして、少しは所得おぼえがあるので、馬車会社へ住み込んで、馭者となった。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御馳走ごちそうを為ますよ。お宮さんは何が所好すきですか、ええ、一番所好なものは?
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)