戒心かいしん)” の例文
乳牛はすこしがたがた四を動かしたが、飼い葉をえて一しんいはじめる。花前は、いささか戒心かいしん態度たいどをとってしぼりはじめた。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
行くゆく沿道の村落で聞く風説などにも、ずいぶん戒心かいしんを要するものがある。その中には多分に、敵の流言もじっているからだった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先生のきょ、同じく戒心かいしんあるにもかかわらず、数十の生徒せいとともな跣足せんそく率先そっせんして池水いけみずくみては門前に運び出し、泥塗満身でいとまんしん消防しょうぼう尽力じんりょくせらるること一霎いっしょう時間じかんよっかろうじてそのさいまぬかれたり。
頼って退去するもあって、赤穂の始末は一段落とも云えるが、お家に取っては、むしろこれからが戒心かいしんの秋ではあるまいか
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当代の代表的人物が一堂にある今夜のような畳の上の場合のほうが、戦場以上に実は危険な場所であるという戒心かいしんなどはまったくないかの如き彼であった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
梁山泊にも泣きッつらを見る日はある。という戒心かいしんを彼らは今やいやというほど、どの顔にもしかめ合っていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はっと、その誘いに、相手の北条新蔵が、戒心かいしんを持ったせつなに、小次郎の体が——いや腰から上の上半身だけが——びゅっと折れて、ひじつるを切ったかと見えたが
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、充分に長治の気色をうごかしてから、その最も戒心かいしんするところをいた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、読もうとする前に、眉につばをつけるくらいな戒心かいしん
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中央では、俄に、それへの戒心かいしんがつよまっていた。
と、左右の者へも、戒心かいしんを与えていた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、彼の戒心かいしんをうながした。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)