おら)” の例文
「本当にそれが一番早道だア、とおらア、いつでも言ふんだけど、まさか、それも出来ねえと見えて、それを遣つて呉れる人が無えだ」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「何、何、おらあ、今年はもう七十五になっての、耳がうといに依って大きな声で謂わっしゃい。」「こりゃ大難だ。婆様ばあさんあのの。」「あいあい。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ハハハ、そうよ、おつ後生気ごしょうぎになったもんだ。寿命じゅみょうきる前にゃあ気が弱くなるというが、おらアひょっとすると死際しにぎわが近くなったかしらん。これで死んだ日にゃあいい意気地無いくじなしだ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「これは大変奥と表で挟討はさみうちだ。そりゃいが天窓あたまの上にござるぶらんこがどうもはや、今朝はおらが一生の厄難だ。殺さば殺せさ、南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人は取附く島も無く、落胆がっかりして、「ああなさけない、おらあ素手ではけえられましねえ。」「わしもさ今日をあてにして昨夕ゆうべから何も食わねえ。」と声を放ちて泣きいだせば
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)