いかり)” の例文
彼はひて目をふさぎ、身のふるふをば吾と吾手に抱窘だきすくめて、恨は忘れずともいかりは忍ぶべしと、むちうたんやうにも己を制すれば、髪は逆竪さかだうごめきて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
花園には若い男と自分のむすめが醜い死屍しがいを横たえていた。劉万戸は自分の頭へ糞汁をかけられたようないかりをもって、その死屍を睨みつけていたが、ふと二人の関係が知りたくなった。
断橋奇聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
さすがに今は貫一が見るたびいかりも弱りて、待つとにはあらねど、その定りて来る文のしげきに、おのづから他の悔い悲める宮在るを忘るるあたはずなりぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さては効無かひなおのれいかりして、益す休まず狂呼きようこすれば、彼ののんどは終に破れて、汨然こつぜんとして一涌いちゆう鮮紅せんこう嘔出はきいだせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)