慾念よくねん)” の例文
実に当然のおしえであるが、かく述べられた太子の心底には、醜怪な政争や人間の無残な慾念よくねんが、地獄絵のごとく映じていたのでもあろうか。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
お前さんの慾念よくねんが深いからだ、だが、災難はもうすぎたらしい、これから杭州に帰って、修身立命の人にならなくてはいけない、もし再びこんなことがあったら
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
血気な男が、かかる折から、おのずから猟奇と好色の慾念よくねんおどって、年の頃人の妻女か、素人ならば手でなさけを通わせようし、夜鷹よたかならば羽掻はがいをしめて抱こうとしたろう。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かれ煙管きせるにすることが慾念よくねんわす方法はうはふでないことをつて、かれ丁度ちやうど他人たにんたいするある憤懣ふんまんじやうからてつけに自分じぶん愛兒あいじしたゝかにゑるもののやうに羅宇らうつぶした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)