恋煩こいわずら)” の例文
華族の金満家きんまんかへ生れて出て、恋煩こいわずらいで死ぬ、このくらいありがたい事はありますまい。恋はかなう方がさそうなもんですが、そうすると愛別離苦あいべつりくです。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「君だって恋煩こいわずらいなんかした事はなさそうじゃないか」と主人も正面から細君に助太刀をする。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そんなら早くそう云ってくれゝばいに、きもつぶした、わっちは柿でも盗んだかと思って、そうか、それは有難ありがてえ、じゃアなんだね、妹娘が思い染めて恋煩こいわずらいで、医者も見放すくれえで
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おそよは十八、おつぎは十六、どっちも年頃としごろの若い娘であるから、世にいう恋煩こいわずらいのたぐいではないかとも疑われたが、ひとりならず、姉妹揃っておなじ恋煩いというのも少しおかしい。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その貴下あなた、うたゝの歌を、其処そこへ書きました、婦人のために……まあ、言って見ますれば恋煩こいわずらい、いや、こがれじにをなすったと申すものでございます。早い話が
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は汗の出るほど耻入はじいります、実はくより娘があの孝助殿を見染みそめ、恋煩こいわずらいをして居ります、誠に面目めんぼくない、それをサばゞアにもいわないで、ようやく昨夜になって申しましたから、なぜ早く云わん
「じゃ、わたしが見ても恋煩こいわずらいをしそうですね、危険けんのん危険けんのん。」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)