恋仇こいがたき)” の例文
おなじ道楽の一蓮托生いちれんたくしょうといったような気持も手伝って、昔の恋仇こいがたきの意地張はどこへやら。心から手を取り合って奇遇を喜び合うのであった。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
野育ちの青年が、水車小屋の娘に恋して、一度は得意と幸福の絶頂に押し上げられながら、黒いひげを生やした恋仇こいがたき猟人かりゅうどが現われて、女と望みを
この組み合わせの心臓の鼓膊こはくが「恋愛曲線」を描くというもっともらしい結論をつくりあげ、それを、共通の「恋仇こいがたき」の結婚の日の贈り物としようとする趣向である。
探偵小説壇の諸傾向 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
この榎に願掛がんがけすれば、浮気男に夢が通じるとか、恋仇こいがたきみつかせるとかいう迷信が生まれ、袴垂が獄死した永延えいえん二年六月七日の七ノ日を賽日さいにちとして、クサ市の盗児から
いわば彼女の恋仇こいがたきである織田の妻が、今は平凡に年とって子供の二三人もあるのと、母は家庭的な交際を始めていることだった、もっとも織田は、その後、財産をすっかりくしてしまって
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
女9 あら! 恋仇こいがたき?……ねえ、教えて。……それは一体、どなた?
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
こう云ったのは誰あろう、恋仇こいがたき南部集五郎であった。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかもその大切な小犬を実験用に買った奴が、その令嬢の愛人の恋仇こいがたきと来ているんだから話がヤヤコシイ。首尾よく犬が取返せるか、返せないか。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その国の北信濃は戸狩とがり村、俗に、花火村ともよぶ部落の煙火師生活のなかに起った恋愛戦で、煙火師だけに、恋仇こいがたきの首を花火の筒先つつさきから打ちあげてしまって、同時に、女の生命いのちも自分の生涯も
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
業平朝臣なりひらあそん恋仇こいがたき
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なるほど、弦之丞はおれの恋仇こいがたき、生かしておいては都合の悪いやつだ。しかし、おめえのほうは、女のほかにあの屋敷の、すばらしい財宝まで、わしづかみにしようとする、の勝っている所がある。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「実を申すと、この周馬の恋仇こいがたきでな」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妙な恋仇こいがたきである。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)