ばけ)” の例文
このばけもの、といったか、河童かっぱ、といったか、記してないが、「いでその手ぶし切落さんと、若き人、脇指わきざし、」……は無法である。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しつ!……これ丑滿時うしみつどきおもへ。ひとりわらひはばけものじみると、ひとりでたしなんでかたをすくめる。と、またしんとなる。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
帰って見えたかとも思いましたしさ……おばけの話をする、老人としよりは居ないかッて、誰方どなたかお才はんに話しをしておいでだったし、どこか呼ばれて来たのかとも、後でね、考えた事ですよ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのばけものに、口惜くやしい、口惜い、口惜い目に逢わされているんですから。……
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
近間ではあるし、ここを出たら、それこそ、ちちろ鳴く虫が糸を繰るに紛れる、その椎樹しいのき——(釣瓶つるべおろし)(小豆あずきとぎ)などいうばけものは伝統的につきものの——樹の下を通って見たかった。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)