微々びび)” の例文
それからまた微々びびと泳ぎだしたが、陸に向いて泳いでいるのか、船のほうへ帰っているのか方角もつかず、ただもう藻掻きにもがいているうちに、自然と岸辺に流れつき、疲労困憊ひろうこんぱいの極
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
在来われわれの見聞した国情からせば文芸の如きは微々びびとしてますます振わぬはずのものであるが、物資欠乏の世に在って雨後雑草の生える勢を示している。その原因はそもそも奈辺なへんに在るか。
仮寐の夢 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
僭越ですが、私は、楚国そこくの始めを憶いおこします。楚ははじめ、荊山けいざんのほとり、百里に足らない土地を領し、実に微々びびたるものでしたが、賢能の士が集まって、ついに九百余年のもとをひらきました。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしおれ有害ゆうがいなことにつとめてるとうものだ、自分じぶんあざむいている人間にんげんから給料きゅうりょうむさぼっている、不正直ふしょうじきだ、けれどもおれそのものいたって微々びびたるもので、社会しゃかい必然ひつぜんあくの一分子ぶんしぎぬ、すべまち
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)