御神おかみ)” の例文
余は仕方がないから、書くには書くが、少し待ってくれと頼んだ。すると御神おかみさんが、そうおっしゃらずに、どうぞどうぞと二遍も繰返して御辞儀をする。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
店の方では電話が仕切なしにちりんちりんと鳴っている。ひん御神おかみさんが、はあもしもしを乃別のべつに繰返す。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宿へ帰ったら、御神おかみさんが駅長の贈って来た初茸をつゆにして、晩に御膳おぜんの上へ乗せてくれた。それを食って、梨畑や、馬賊や、土の櫓や、赤い旗の話しなぞをして寝た。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そばに見ていた三十恰好がっこうの商家の御神おかみさんらしいのが、可愛らしがって、年を聞いたり名を尋ねたりするところをながめていると、今更いまさらながら別の世界に来たような心持がした。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それを心から感心して見るのは、どうしたって、本町の生薬屋きぐすりや御神おかみさんと同程度の頭脳である。こんな謀反人むほんにんなら幾百人出て来たって、徳川の天下は今日までつづいているはずである。
まへ御婆おばあさんがやつぐらゐになる孫娘まごむすめみゝところくちけてなにつてゐるのを、そばてゐた三十恰好がつかう商家しやうか御神おかみさんらしいのが、可愛かあいらしがつて、としいたりたづねたりするところながめてゐると
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)