そっ)” の例文
かかる折から、柳、桜、緋桃ひもも小路こみちを、うららかな日にそっと通る、とかすみいろど日光ひざしうちに、何処どこともなく雛の影、人形の影が徜徉さまよう、……
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一寸ちょっとお尻をでてから、髪をこわすまいと、低くこごんでそっと門をくぐって出て行くが、時とすると潜る前にヒョイとうしろを振向いて私と顔を看合せる事がある。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
本箱などが幾つも積重なって居りますから、疎相そそうな事をした、用場かと思って大切な書物のある処を無闇に明けて済まないと、そっと閉めようとすると、昔の屋敷女やしきもので足袋を穿いて居るのに
父が肩を抱いて、そっと横に寝かした。乳母が、掻巻かいまきせ懸けると、えりに手をかけて、向うを向いてしまいました。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いや、手をやすめず遣ってくれ、あわれと思ってしずかに……よしんばそっと揉まれた処で、私は五体が砕ける思いだ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)