げん)” の例文
げんも並ぶとしたら、この卓子テーブルじゃもう狭いね、来年はミツ坊も坐って、おととを喰るだろうし、なア坊や、こりゃ卓子テーブルのでかいのをあつらえなくちゃいけねえ」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
幕府に気味悪がられる程度はいいが、げんを放っては万事休す。——で、わしは徳島城へやってきた、何でもかでも、阿波守様に、その無謀を思い止まらせんためじゃ。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
空が曇っているから、海はにえ切らない緑青色ろくしょういろを、どこまでも拡げているが、それと灰色の雲との一つになる所が、窓枠の円形を、さっきから色々なげんに、切って見せている。
Mensura Zoili (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
瞬く中に、百本の矢は一本のごとくに相連なり、的から一直線に続いたその最後の括はなおげんふくむがごとくに見える。傍で見ていた師の飛衛も思わず「善し!」と言った。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ほかにビクターにコルトー(ピアノ)とインターナショナル四重奏団のが入っているが、これもコルトーのピアノがすぐれているというだけでげんがあまり上等でなく吹込みも新しくない。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
走ることは走るといったところで、こっちは勾股こうこを念入りに曲って走っている間に、あっちはげんを直走して先廻りと来りゃ、網にひっかかるのはあたりまえ、こっちの抜かりじゃあねえ
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ただ、バイオリンのげんだけが、鳴っているのではありません。こまも、せんも、共鳴板も、みんな鳴っているようでした。ほんとうに、おどろくべきことでした。曲は、むずかしいものでした。
それ等がみな、一げんかって萬星滅す——四谷正宗の名声と共に光りを薄くしてしまった。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「僕知ってらあ。きっとゴム靴だよ。もうせん、僕に拵えてくれたねえ、げん兄さん」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
弓も、数百げんが一時にうなると、爆風に似て、矢道やみちは黒い噴霧ふんむのようだった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)