弥〻いよいよ)” の例文
旧字:彌〻
八幡大菩薩だいぼさつ、秀吉が存分のごとく候はば、弥〻いよいよ、互に申し承るべく候ふ事、右の趣き、一々輝元へ相達せらるべく候ふ事、肝要に候
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それぞれきほどにて引き別るることとなり、妾も弥〻いよいよ明日岡山へ向け出立というその夜なりき、重井より、是非相談あれば松卯に来りくれよと申し来りぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「二十五日。雨。太田原ノ駅ニ飯シ鍋懸ニ憩ヒ越堀駅ニ宿ス。コノ際平岡漫嶺断続シテ相連リ原野ソノ間ヲ補綴ほていス。弥〻いよいよ望ムニ黄茅白葦こうぼうはくいナルハイハユル那須なすノ原ナリ。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
されば、この書をあらわすは、もとよりこの苦悶を忘れんとてのわざにはあらず、いな筆をるその事もなかなか苦悶のたねたるなり、一字は一字より、一行は一行より、苦悶は弥〻いよいよまさるのみ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
日も早や晩景に相なり候故、なほ/\驚き、後家を始め得念にはいづれ両三日中かさねて御礼に参上致すべき旨申し、厚く礼をべ候て立出たちいで候ものゝ、山内の学寮へは弥〻いよいよ時刻おくれて帰りにくゝ
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかるに、磯山は、弥〻いよいよ出立というその前日逃奔とうほんし、更にその潜所せんしょを知るあたわず。ゆえを以てむなく新井あらい代りてその任に当り、行く事に決せしかば、彼もまた同じく、のうに同行せん事を以てす。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
一心に念仏致をり候処、突然彼方かなたより女の泣声聞え来り候あいだ弥〻いよいよ妖魔ようま仕業しわざなるべしと、その場にうづくまり、歯の根も合はずふるへをり候に、やがて男の声も聞え、人の跫音あしおと次第に近づき来るにぞ
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)