引毮ひきむし)” の例文
と、きちんと両手をついたかと思えば、すぐに引毮ひきむしりそうな手を、そのまま宙に振って、また飛上って、河童かっぱかぶった杯をたたいた。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平三は之を聞くと胸が一ぱいになつて、飛びかゝつて思ふ様髪の毛でも引毮ひきむしつてやりたい気がした。併し其悲憤の情は常に其出口を塞がれて居た。
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
女の前髮は掴んで引毮ひきむしられたやうで目茶滅茶に崩れて居りますが、外に傷らしいものは一つもありません。
あっと見た刹那! 三樹八郎は右へ躰を開いていたし、湛左は、斬下した躰勢たいせいのまま、だっと床間へのめって行って、掛軸を右手に引毮ひきむしりながら、まるで雑布巾ぞうきんのように崩落ちる。
武道宵節句 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それさへこけうもれたのを、燈心とうしん掻立かきたてる意氣組いきぐみで、引毮ひきむしるやうに拂落はらひおとして、みなみきた方角はうがくむつもりが、ぶる/\と十本じつぽんゆびふるはして、おどかしけるやうな
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)