廃嫡はいちゃく)” の例文
旧字:廢嫡
そして弥平治には父、十兵衛には叔父にあたる明智光安入道あけちみつやすにゅうどうといえば——これは鷺山さぎやま山城守道三やましろのかみどうさん方の腹心で、義龍廃嫡はいちゃくの急先鋒であった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
アビルと名乗った清一郎が俺に言っていたように、彼が一時アナーキストとして暴れたことは事実だが、そのため廃嫡はいちゃくを宣言されたわけではない。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
なお帰らねば廃嫡はいちゃくせんなど、種々の難題を持ち出せしかど、財産のために我が抱負ほうふ理想をぐべきにあらずとて、彼はうべな気色けしきだになければ、さしもの両親もあぐみ果てて
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
宗助はあんな事をして廃嫡はいちゃくにまでされかかった奴だから、一文いちもんだって取る権利はない。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
本来なら土井鉄之助は、越前大野の四万一千石をつぐはずだったが、継母ままははのために廃嫡はいちゃくされ、いっそ気楽な世わたりをしようと、非人の境涯へ身を落したが、もとを正せばおなじ清和源氏せいわげんじ
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
妹が聟養子をとるとあれば、こちらは廃嫡はいちゃくと相場は決っているが、それで泣寝入りしろとは余りの仕打やと、梅田の家へ駆け込むなり、毎日膝詰の談判をやったところ、一向に効目がない。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
廃嫡はいちゃくすると言うんでしょう。」
その母堂のいる末盛城すえもりじょうへ近づいて、折もあらば、信長を廃嫡はいちゃくし、信行を主君の座に立てようと意図している男だった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼も妾の意を察して、一家の和合望みなきを覚りしと見え、今回は断然廃嫡はいちゃくの事を親族間に請求し、自分は別居して前途の方針を定めんとの事に、妾もこれに賛して、十万の資産何かあらんと
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
けれど献公が見るに、正室の子はいずれも秀才なので、驪姫りき讒言ざんげんしても、それを廃嫡はいちゃくする気にはなれずにいた……
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老いゆく道三は、義龍を疑い、義龍をのろい、遂には義龍を廃嫡はいちゃくして、二男の孫四郎を立てようと計った。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
稲葉山いなばやま斎藤義龍さいとうよしたつ養父ちち道三山城守どうさんやましろのかみが、自分を廃嫡はいちゃくして、二男の孫四郎まごしろうか、三男の喜平次きへいじをもり立てようとしているのを察して、仮病けびょうを構えて、そのふたりを呼びよせ、これを殺してしまった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)