ちひさ)” の例文
自分はちひさい時乳母うばから、或お姫様がどう云ふ間違からか絹針を一本おなかの中へ呑込んでしまつた。お医者様も薬もどうする事も出来ない。
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「だつて僕のちひさい時分は、正月などにはきつとおぢいさんが、僕達を作兵衛英清の懸物の前に坐らせてお辞儀をさせたぜ。」
父を売る子 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
お大は姉と違つて、ちひさい時分から苦勞性の女であつたが、糸道いとみちにかけては餘程鈍い方で、姉も毎日手古摺てこずつて居た。其癖負けぬ氣の氣象きしやうで、加之おまけに喧嘩がすきと來て居る。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
こちのひいさまはな、それは/\しほらしうて……ほんに、ほんに、まだちひさうて、分別たわいもないことをうてゞあった時分じぶんは……お、あのな、パリスさまうて、お立派りっぱかたがな
で、自分は先方に對して自己の地位思想の幾分を傳へ得たと同時に、令孃の身分は現代富豪の一二に數へられるなにがし銀行の頭取の長女で、ちひさい時分から天主教の女學校で教育された事をも知り得た。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)