常春とこはる)” の例文
鄴都ぎょうと後宮こうきゅうに一園を造らせ、多くの花木を移し植えて、常春とこはるの園ができあがった。……というので曹操は、一日その花園を見に出かけた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
煖房スチームでほどよく暖められた社交室のなかは、うっとりするほど暖かい。窓べには冬薔薇やカーネーションが大きな花をひらき、ここばかりは、常春とこはるのようななごやかさである。
キャラコさん:01 社交室 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そこに弥生は、渦をまく濁流のかわりに百花繚乱たる常春とこはるの楽土を見たのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
なんじの行き過ぎを遺憾いかんに思うものである。シベリアを熱帯にせよとは、申しつけなかったつもりである。早々そうそう香港ホンコンおもむきて、金博士に談判だんぱんし、シベリアを常春とこはるの国まで引きかえさせるべし。
常春とこはるあけぼの望み得るぞ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
これはしも 常春とこはる
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
「ウム、阿波はよいぞ阿波の国は——八重のうしおめぐらされて渭之津いのつの城の白壁がある。峰や山には常春とこはるの鳥も歌おうし、そちの好きなあいかすみのようにけむっている……」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人はその夕方、ボウム駅からP・L・M急行パリ・リヨン・メディティラネで、常春とこはる碧瑠璃海岸コオト・ダジュウルへ向けて出発した。
うひびかり、げに常春とこはる
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
常春とこはるとか常夏とかいふ語はあるが、常冬とこふゆといふのは眼にふれたことがない。そんな熟語はないだらう。けれど事實の上ではあつたといへる。また觀念的にはさういへるものがある。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
ついに心神耗弱したるコントラ・バスの研究生きつねのコン吉氏は、その脳神経に栄養を与えるため、常春とこはる碧瑠璃海岸コオト・ダジュウルに向けて巴里パリーを出発したが、その途中において数々の不可解なる事件に遭遇。
ひたすらに、新朝廷をめぐる公卿の門は、常春とこはるの世を見たように、はしゃいでいた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)