帯際おびぎわ)” の例文
旧字:帶際
「こいつ」一度、よろめいて、腰をつきかけた平次郎は、起ち上がって、女房の帯際おびぎわを後ろからつかんだ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それで私は起き上ってお母様の方へ行こうとしましたが、いつの間にか私はお父様から帯際おびぎわを捉えられておりまして、息が止まるほど強く畳の上に引き据えられました。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
鍛冶倉の背後うしろには、さっきから女が一人、泣き伏している、その帯際おびぎわを取った鍛冶倉。
それを見ると政雄の好奇心が動いて来た。政雄はそっと右の手を女の帯際おびぎわにやった。とあたたかな指がそれにかかった。政雄は反響があったと思ったので、三足みあしばかり右の方へ寄って待っていた。
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
娘は無念さ、恥かしさ。あれ、と前褄まえづま引合して、蹌踉よろめきながらげんとあせる、もすそをお録が押うれば、得三は帯際おびぎわ取ってきっと見え。高田は扇をさっと開き、骨のあいからのぞいて見る。知らせにつき道具廻る。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
耀蔵は、びかかって、女の帯際おびぎわをつかんだらしい。キラリッと、短い刃が、くうにきらめいた。耀蔵の手がからんだ。がしかし、彼の手に倒されたのは、人形の胴中だった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女郎屋の敷居をまたがないうちに吾輩の帯際おびぎわを捉まえて、グイグイと引っぱり戻した奴が居る。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼はとうとう女に近寄ってその帯際おびぎわに手をかけた。
蟇の血 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
眼をつぶって、敵の帯際おびぎわぶりついていた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)