巨巌きょがん)” の例文
旧字:巨巖
押しのけようとして手を掛けた岩が、千貫もある巨巌きょがんだとわかったときのような、重くるしく、やりきれない気分におそわれたのであった。
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
古焼新焼しんやけと相聯繋れんけいして、左右の濃い蒼翠そうすいの間を蜿蜒えんえんとして爬行はこうし、さながらそこに巨巌きょがんの行進曲を奏でているように見える。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
あの空とあの雲の間が海で、浪の切立きったち岩の上に巨巌きょがんを刻んで地から生えた様なのが夜鴉の城であると、ウィリアムは見えぬ所を想像で描き出す。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
藪原長者の大館おおやかたは木曽川に臨んだ巨巌きょがんの上にとりでのように立っていた。すそは石垣で畳み上げ、窓はあかがねの網を張り、おおかみより猛々たけだけしい犬の群は門々の柱につないであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
河身を見れば濁水巨巌きょがん咆哮ほうこうしてまさしく天にみなぎるの有様、方等般若ほうとうはんにゃの滝もあったものにあらず、濁り水が汚なく絶壁を落つるに過ぎない。中の茶屋で昼食ちゅうじき。出かけるとまたもや烈風強雨。
畷道あぜみちを桂川の上流に辿ると、迫る処怪石かいせき巨巌きょがん磊々らいらいたるはもとより古木大樹千年古き、楠槐なんかいの幹も根もそのまま大巌に化したようなのが纍々と立聳たちそびえて、たちまち石門砦高く、無斎式、不精進の
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また左手の真上には妙見の内側面が、私達の踏んで来た外側面の緩傾斜に引かえ、およそ六十度の急傾斜をなし、切っ立てたような巨巌きょがんの絶壁となって、私達の頭上を圧迫している。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
普賢ふけんなどに較べてはるかに低いが、巨巌きょがんの最も多く露出している山であることが異彩を放ち、また、雲仙火山群の最南端の山であるゆえに、天草諸島を最も近く俯瞰ふかんする眺望はすぐれており
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)