岩壁がんぺき)” の例文
一方には黒人モコウが早くも洞の外がわの岩壁がんぺきの下に石をつんでかまどをつくり、スープのなべをかけ、小鳥のくしをやいたりした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
と、熊蔵が、用意ようい松明たいまつを持たせて中にすすむと、清水にぬれて海獣かいじゅうはだのようにヌルヌルした岩壁がんぺきを、無数むすう沢蟹さわがにが走りまわったのに、ハッとした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここには旅行者たちが自分の名前をきざみつけることのできるような記念石もなければ、どこかに自分の姿をえがかせることのできるような岩壁がんぺきもありません。
青淀の岩壁がんぺきをかく穿つもの
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
午後五時ごろ、一同は岩壁がんぺきの南のほう、一マイルのところまでくると、そこに一じょうの細いたきが、岩のあいだから落ちているのを見た。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ばらばらと櫓梯子やぐらばしごりると、ふたりは文字もんじ奥郭おくぐるわ内部ないぶへはいった。そして、岩壁がんぺき洞窟どうくつ利用りようしててられてある、とりでの本丸ほんまるのなかへ走りこんだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ようようにしてかれらは、左門洞百五十メートルくらいの地点にきた、しかし左門洞には、まだ突出とっしゅつした岩壁がんぺきをまわらねばならないのである。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
岩壁がんぺきの一たんに、ふとい鉄環てっかんが打ちこんであり、かんに一本の麻縄あさなわむすびつけてあった。で、そのなわはしをながめやると、大きな丸太筏まるたいかだが三そう、水勢すいせいにもてあそばれてうかんでいる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)