寄付よりつ)” の例文
落ちて来るのを見向きもしないでスタスタと実験室に引返ひきかえすという変りようだからトテモ吾々われわれ凡俗には寄付よりつけない。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
血相を変えて引廻しの馬の前に寄付よりつき、罪人の顔を見ますと、今度は俯向うつむいていまして少しも顔が見えませんけれども、友之助に相違ありませんから
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
この地図を皆赤くすれば世界中露西亜の領分になって仕舞しまうだろう、又これを青くすれば世界中日本領になるだろうと云うような調子で漫語放言まんごほうげんとて寄付よりつかれない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その時分に神下しが「もし英国政府が攻めて来る憂いがあれば乃公おれの身体を持って行って城の所へ据えて置け。そうすれば決して彼らは寄付よりつくことが出来ない」と法螺ほら
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
真ん中に刃を振りかぶったのは余吾之介でしょう。手燭の行灯あんどん覚束おぼつかない灯を便たよりに、四方から斬ってかかりますが、余吾之介の気組の激しさに暫らくは寄付よりつく者もありません。
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
竹のや主人、饗庭あへば篁村氏は剽軽へうきんな面白い爺さんだが、夫人はなか/\のしつかものなので、お尻の長い友達衆は、平素ふだんは余り寄付よりつかない癖に、夫人が不在るすだと聞くと、直ぐ駈けつける。
ただ言行を謹み、何と云われてもハイ/\と答えて勤めて居ました。自分の内心には如何どうしても再遊と決して居るけれども、周囲の有様と云うものは中々寄付よりつかれもしない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
と気は附いたけれども、なに両人ふたりとも堅いから大丈夫と思って居りまするくらいで、なか/\新五郎はお園の側へ寄付よりつく事も出来ませんが、ふとお園が感冐ひきかぜの様子で寝ました。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と言つて、暫くは気味を悪がつて寄付よりつかなかつたものださうだ。
所が武道一偏、攘夷の世の中であるから、張子の太刀たちとかかぶととかうようなものを吊すようになって、全体の人気にんきがすっかり昔の武士風になって仕舞しまった。とてれでは寄付よりつきようがない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)