宿じゅく)” の例文
日本橋、通旅籠町とおりはたごちょうの家持ちで、茶と茶道具一切いっさいあきなっている河内屋十兵衛の店へ、本郷森川宿じゅくの旗本稲川伯耆ほうきの屋敷から使が来た。
半七捕物帳:27 化け銀杏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
下総しもうさの中田宿じゅくでございました」喜兵衛は旅嚢りょのうの中から文箱ふばこを取り出して、甲斐の前へ差出した。その手はふるえていた、「まず御書面をごらん下さい」
数日前に閣老部屋から早打が立って、木曾奈良井宿じゅくの百草問屋で大蔵というものを召捕れという命が飛んでいた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれはたしか文化四年四月の申渡もうしわたしとおぼえていますが、町奉行所の申渡書では品川宿じゅく旅籠屋はたごや安右衛門かかえとありますから、品川の貸座敷の娼妓ですね。
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「一人は藤沢宿じゅく、もう一人は川崎、どっちも十手を預かる御用聞だ」岡っ引は片手を伸ばして政のえりつかんだ、「——さあ吐いちまえ、てめえ平次とどんな仕事をした」
あすなろう (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
本郷森川宿じゅくを出たお綱と万吉とが、中仙道をはかどって、もうそろそろ碓氷峠うすいとうげの姿や、浅間の噴煙けむりを仰いでいようと思われる頃、——三日おくれて、同じ中仙道の宿駅に
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その日は八王子泊り、昨夜は吉野宿じゅくで泊って、今日こっちへ来るというのである。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それは神奈川宿じゅくの海だった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)