なり)” の例文
蒲留仙 五十前後のせてむさくるしいなりをしている詩人、胡麻塩ごましおの長いまばらな顎髯あごひげを生やしている。
ふりかえって東を見れば、㓐別谷りくんべつだにしきるヱンベツの山々をまえて、釧路くしろ雄阿寒おあかん雌阿寒めあかんが、一はたけのこのよう、他は菅笠すげがさのようななりをして濃碧の色くっきりと秋空に聳えて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
貴方たちにお目にかゝっても御挨拶ごええさつも出来ねえ人間だから、馬鹿な野郎と思召しましょうが、重さんに逢ってから是れまでは随分なげえ間の話ですが、わっちは其の侍のなり恰好も知ってるから
某日あるひ其の長者の家へ、穢いなりをした旅僧が錫杖を鳴らしながら来て手にした鉄鉢をさし出して
長者 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
申し訳がないって万年橋で首を縊ろうとする処へ、通り掛ッたのは、伊皿子台町の荷足の仙太郎という誠に気丈な親方で、其のお人が助けて下さいまして、其の刀を取った侍のなり恰好も見て居るし
「こんななりをしてて、仲間の乞食に見つかっては大変じゃ」
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)