宮闕きゅうけつ)” の例文
彼の幼きや土塊どかいを以て宮闕きゅうけつの状をつくり、曰く、これ織田信長が禁裡きんりの荒廃を修繕したるにするなりと。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
とかいっているから、都の変と聞いて、宮闕きゅうけつの安危を案じる面々が、このほかにも各地から、男山八幡の山上へでも集まって、何かの策に出ようとするものらしく思われる。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
絶佳明媚ぜっかめいび山水さんすい粉壁ふんぺき朱欄しゅらん燦然さんぜんたる宮闕きゅうけつうち、壮麗なる古代の装飾に囲繞いにょうせられて、フランドル画中の婦女は皆脂肪あぶらぎりて肌白く血液に満ちて色赤く、おのが身の強健に堪へざる如く汗かけり。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「それにまた国司信濃や益田右衛門介らが鎮撫ちんぶを名としてせ加わって、とうとう御所へ押しかけてしまった、そこで会津、一橋、薩州の兵を相手に、かしこくも宮闕きゅうけつの下を戦乱のちまたにしてしまった」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「この大事を挙げながら、そんな手ぬるい宣言を将軍の口から発しては困ります。今にして、宮闕きゅうけつがんを除き、根を刈り尽しておかなければ、後日かならず後悔なさいますぞ」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
絶佳ぜっか明媚めいび山水さんすい粉壁朱欄ふんぺきしゅらん燦然さんぜんたる宮闕きゅうけつうち、壮麗なる古代の装飾に囲繞いじょうせられて、フランドル画中の婦女は皆脂肪あぶらぎりてはだ白く血液に満ちて色赤く、おのが身の強健に堪へざる如く汗かけり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
同じ仲間の十常侍郭勝かくしょうだともいわれているし、そこらにまで、乱入していた一兵士だともいわれているが、いずれにせよ、それすら分らない程、もう宮闕きゅうけつの内外は大混乱を呈して
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「誰か我がために、新帝を正して、宮闕きゅうけつの謀賊どもを討ち尽さん者やある」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつは、後醍醐の御座ぎょざをも、ここでは智積寺の行宮ふかくに奉じて、自己の伝奏によらねば、決して近づけさせることではなかった。はやくも禁門の制を布き、宮闕きゅうけつの威厳を復活させていたのである。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
治安に名をかり、宮闕きゅうけつの内外に、常時の注目を怠らない。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——宮闕きゅうけつだぞ。ここは宮闕なるぞ。退されッ、退され」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)