みのる)” の例文
旧字:
さてこのみのるのみいどんは、どうしてか生れつきたいへんな煙草好きで、自分でもこれには全く困っていました。
短く白髪を刈込んだ一人の客が、森彦と相対さしむかい碁盤ごばんを置いて、煙管きせるくわえていた。この人は森彦の親友で、みのる直樹なおきの父親なぞと事業を共にしたことも有る。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
が、顔よりもむしろ肌合が忰とは全く反対で、忰のみのるは陽気で濶達かったつな方であるが、父の広親は陰性の、謹厳と云う方の人であるらしく、つまり典型的な「京都人」なのであった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
二人の息子は、体格と云い容貌と云いまるで瓜二つで、二人とも同じような白い蚊飛白かがすりの浴衣を着、同じような黒い錦紗きんしゃの兵児帯を締めている。名前はひろしみのる年齢としは二人とも二十八歳。
石塀幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
四つになるみのるが急に熱をして頭が痛い、頭が痛いと、のべつに訴えていた。
秘められたる挿話 (新字新仮名) / 松本泰(著)
この興行で俄かに名声をあげたのは高田みのるであった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ところで、自分はふとした縁で御牧家の庶子のみのると云う人を知っている。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それゆえ今も私が思い出すのはみのるではなく、みいどんなのです。