姦通まおとこ)” の例文
「それはわかりませんが、姦通まおとこだということです……引き上げられてからまたその死骸を、三日の間さらされるんだそうですよ」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これ、姦通まおとこにも事情はある、親不孝でも理窟を云う。前座のような情実わけでもあって、一旦内へ入れたものなら、猫のの始末をするにも、鰹節かつおぶしはつきものだ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
姦通まおとこ泥棒ぬすっとの二重の大罪人です。それを知っている者は、あの惨死しました蟹口さんだけです。蟹口さんは私から、女と二千円の金を盗まれたまま、黙っていてくれたのです。
衝突心理 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
斯ういう不心得な女が多く姦通まおとこなんかという道ならぬことを致すのでございましょう。
さうでなけりやあ、己れだつて、離縁つた女房に、姦通まおとこ呼ばはりするもんけい。己れから暇を取つたのも、そこらからの寸尺さしがねと、遅幕ながら、気が注くからにやあ、どうでも捨ててはおかれない。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
鑵詰かんづめの中へ石ころを入れて、兵隊にわしても、国家のためだと云う実業家があるじゃないか、それにくらべりゃ、姦通まおとこをつかまえて、悪いことをさせないようにするのは、たいした違いじゃないか
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
居たらまた何とする。「やい、やい、馬鹿落着に落着おちつくない。亭主の許さぬ女房をかくしておけば姦通まおとこだ。 ...
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこでこんどは河岸かしをかえてお浜さんへ取りつきましたね。いい女でしたね、姦通まおとこをするくらいの女ですから、美しい女ではあるが、どこかきついところがありましたね。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
どうか丹三さんとおえいと色にでも成ったなら、私も丹治さんと倶々とも/″\に末永く楽しめるだろうと思いまして、ぬしあるおえいに色事を勧め、丹三郎と密通をさせ、親子同志で姦通まおとこをいたし
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
... 叔母貴をばさんが、己れが女房のその内から姦通まおとこせいと教えたかい』『なるほどこれは、よいいひ抜け。死人に口なし、死人こそ、よい迷惑だ』と冷笑ふ『またそんないひ掛り、しまいまで聞いたがよい。それでは何かえ、この私が、お前の家に居た時から。深井様と懇したといふのかえ』
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
ええ、その時、この、村方で、不思議千万な、色出入り、——変な姦通まおとこ事件がございました。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
姦通まおとこでもしていると思われては困ります、私の亭主も男を売る商売ですから、どんなにおこって私を女郎に売るか何だか知れません、亭主に対して打捨うっちゃって置けませんから手を引いておくんなさい
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「第一、姦通まおとこでございます」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私が、貴女あなたほどお美しければ、「こんな女房がついています。何のやどが、木曾街道きそかいどうの女なんぞに。」と姦通まおとこ呼ばわりをするそのばばあに、そう言ってやるのが一番早分りがすると思います。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その間に、ただいま申しました、姦通まおとこ騒ぎが起こったのでございます。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おどれ、俺の店まで、呼出しに、汝、逢曳あいびきにうせおって、姦通まおとこめ。」
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ま、姦通まおとこめ。ううむ、おどれ等。」
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)