妥協だきょう)” の例文
彼らの正体をつきとめてくれたまえ、そしてわれら海底都市に対して何を行うつもりか。われらと平和的に妥協だきょうするつもりはないか。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いちど興醒きょうざめた心は呼び戻しようもない気がする、それが遊びの世界であるがゆえに、よけいに気持の妥協だきょうがつかないのである。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とか、いろいろ次郎の気持に妥協だきょうするようなことを言ってみたが、次郎の沈默は頑としてやぶれなかった。
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
その代り、こちらもまたあるところまで行くていと、妥協だきょう譲歩じょうほをしておきます、な。螢や疝気の虫を
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
この点、まだ現代の女性はイージーでセンチで安価あんか妥協だきょうをしてしまうのが多い。異性に対し、もっと高貴こうきたしか潔癖けっぺきを持ってもらい度い。潔癖のない女ほど下等で堕落だらくやすいものはない。
有たずに強い彼等も、有てば弱くなるおそれがある。世にも恐ろしい者は、其生命さえも惜まぬのみか、如何なる条件をもって往っても妥協だきょうの望がない人々である。彼等は何ものを有っても満足せぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
犬が妥協だきょうしたにかかわらず、人間の方は反対に興奮こうふんが加わった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
信用すると云いさえすれば、それでいいんだ。万一の場合が出て来た時は引き受けて下さいって云えばいいんだ。そうすればおれの方じゃ、よろしい受け合ったと、こう答えるのさ。どうだねその辺のところで妥協だきょうはできないかね
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そんなところで、二人は妥協だきょうがついたとみえ、夜は、燈下に酒を酌み合って、けるのも忘れて楽しげに話しこんでいた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
形のととのった共同生活の姿を一刻も早くつくりあげようとしていいかげんに妥協だきょうしたり、盲従もうじゅうしたり、あるいは人任せにしたりすることは、厳につつしまなければならない。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「先生がたの前で、わたくし風情ふぜいが、生意気な英語の使い方をしたのは間違ってるか存じませんが——」この英語はいわゆる妥協だきょうということに当るのではないかと思いなおしたのだが
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
「カビ君。なんとか妥協だきょうの道はないのか」
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
決してつづけてはいないでしょう。たいがいそれまでの間に、都合のよい妥協だきょうを見つけて安息してしまうものです。あなたが他人ひととちがう点は実にそこにあるのだ
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今朝の状勢では、そうとしか思えませんでした。今度の場合は、しかし、何としてもそれに妥協だきょうするわけには行かないと思います。友愛塾が、そのために犠牲ぎせいになっても、いたし方ないでしょう。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
領界の不安を除くだけの意味なら、もっと保守的にも、もっと妥協だきょう的にも、他に方法はいくらもある。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、おれはその眉唾者とも妥協だきょうするよ、だから、綽空も、生かしておかなければ、商売にならない
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城頭の旗に反信長をあきらかとしていながら、いまだにその屋根の下では、戦うべしといきまく者と、妥協だきょうすべしという者とが、事ごとに葛藤かっとう相剋そうこくしている実状が、眼に見るごとく読みとれる。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど、手頃でどこの垣へでもはまるような石は、抱える大名がその多いのを持て余し、これはと思う石には、圭角けいかくがあり過ぎたり、妥協だきょうがなくて、自己の垣へはすぐ持って来られないのが多かった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妥協だきょうはせぬという態度じゃ。ずいぶんさとしたつもりじゃが」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
結局「高知減こうちべらし」というところで妥協だきょうがついた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)