奇蹟的きせきてき)” の例文
僕は『世の中には奇蹟的きせきてきに幸福なむす子もあればあるものだ。そういうむす子の描いた絵が珍しいから僕の部屋へ掛けて眺めよう』
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
だが、読者諸君、そこへ踏みいって無残にも死に、奇蹟的きせきてきにも大記録を残すことのできたわが日本人の医師がいるのだ。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
肉体の生命せいめい奇蹟的きせきてき無事ぶじだったかわりに、あの少年の精神せいしん狂気きょうきあたえられたのではないか? 少女たちはにじ松原まつばらからめいめいのみやこへ帰った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奇蹟的きせきてきな生命の弾力は、幾度も死を伝えられたショパンをち上らせたにしても、その弾力には限りがあった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
頭目。あんたから、わがはいが預っているこの怪我人は、奇蹟的きせきてきに生きているんですぞ。手荒なことをして、この老ぼれが急に死んでしまっても、わが輩は責任を
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
四十日を荒野に断食して過した時、彼は貧民救済と、地上王国の建設と、奇蹟的きせきてき能力の修得を以ていざなわれた。然し彼は純粋な愛の事業の外には何物をもえらばなかった。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
当然専門の理学士によってのみ初めてできうべき器械類が、そういう人の手によらずしてともかくも造られているという奇蹟的きせきてき事実は至るところに見受けられる事であるから。
蓄音機 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
われらは、ともすると、くもつてくもわするゝ……三本木ぼんぎは、柳田国男やなぎだくにをさんの雑誌ざつし——(郷土研究きやうどけんきう)と、ちかくまた(郷土会記録きやうどくわいきろく)とにをしへられた、伝説でんせつをさながら事実じじつほとん奇蹟的きせきてき開墾地かいこんちである。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けれども、みんなのくるのが待ちきれずに、ヤッローは、じぶんが奇蹟的きせきてきに助かったことや、人間が親切しんせつなことを話しはじめました。と、そのとき、うしろでダン、ダンという鉄砲てっぽうの音がしました。
少年ハイドンの楽才はモーツァルトのように奇蹟的きせきてきではなかったが、かなり早くから芽生めばえ、六歳のとき早くも遠縁の音楽家フランクの家庭に託されて、基礎的な教育を受け
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)