太鼓櫓たいこやぐら)” の例文
いや以てのほかの騒動だ。外濠そとぼりからりょういても、天守へらいが転がつても、太鼓櫓たいこやぐらの下へ屑屋がこぼれたほどではあるまいと思ふ。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
太鼓櫓たいこやぐら棟木むなぎの陰へ、すいすいと吸いこまれるように、はちがかくれてゆく、またぶーんと飛び出してゆくのもある。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
品川堀が西へ曲るとこに来た。丸太を組んだ高櫓たかやぐらが畑中に突立って居る。上には紅白の幕を張って、回向院の太鼓櫓たいこやぐらを見るようだ。北表面きたおもてまわると、墨黒々と筆太ふでぶと
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
と、やり出したとき、どウウウウん、どうん! お太鼓櫓たいこやぐらで打ち出した八刻やつの合図である。長廊下の向うから多勢の気配が曲って来て、老中方お退出さがりという声がする。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
涌谷城は大手門からすぐ石段になり、鉤の手に登り詰めたところが中門、それをはいると左に、二層の太鼓櫓たいこやぐらがあった。そこは広場で、左にたて、右に諸士の詰所や役所が並んでいる。
驚破すわ、そのまぎれに、見物の群集ぐんじゅの中から、頃合ころあいなものを引攫ひきさらつて、空からストンと、怪我けがをせぬやうにおといた。が、丁度ちょうど西の丸の太鼓櫓たいこやぐらの下の空地だ、真昼間まっぴるま
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
また一段たかい太鼓櫓たいこやぐらの屋根へかるくとまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太鼓櫓たいこやぐらのうえにおられました」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)