太白たいはく)” の例文
黄人こうじんの私をして白人の黄禍論こうかろんを信ぜしめる間は、君らはすべからく妻を叱咜しったし子をしいた太白たいはくを挙げてしかして帝国万歳を三呼さんこなさい。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
何品でしたか、鼠色ねずみいろで一面に草花の模様でした。袖口そでぐちだけ残して、桃色の太白たいはく二本で、広く狭く縫目ぬいめを外にしてありました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
こんちりめんへ雨雲を浅黄あさぎ淡鼠ねずみで出して、稲妻を白く抜いたひとえに、白茶しらちゃ唐織からおり甲斐かいくちにキュッと締めて、単衣ひとえには水色みずいろ太白たいはくの糸で袖口の下をブツブツかがり
久し振りの米の飯を、こうも山ほど食えるかと涙のでるほどよろこんでいると、船頭がそれに太白たいはくの砂糖を振りかけ、人数だけに盛り分けてしまったのには力を落した。
重吉漂流紀聞 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
これは何がためなれば、其貨幣を入れるためで、それを一ツつゝ形に合せて丸く縫ふことと太白たいはくの糸で口をくゝることなどに容易ならぬ苦心をいたしましたこともハツキリ覚えて居り升。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
僕が去年の秋以来、君たちと太白たいはくを挙げなくなったのは、確かにその女が出来たからだ。しかしその女と僕との関係は、君たちが想像しているような、ありふれた才子の情事ではない。
奇遇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
また、司馬懿しばいはよく天文をるので、近年北方の星気盛んで、魏に吉運の見えるに反し、彗星すいせい太白たいはくを犯し、蜀天はくらく、いまや天下の洪福こうふくは、わが魏皇帝に幸いせん——と予言していたところなので
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)