天来てんらい)” の例文
実生活の圧迫を逃れたわが心が、本来の自由にね返って、むっちりとした余裕を得た時、油然ゆうぜんみなぎり浮かんだ天来てんらい彩紋さいもんである。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
仲時は天来てんらいの声をけたように、すぐ飛んで帰ろうとした。一刻もはやく、時益とはかって、その事を行おうと、とっさに、思い立ったからだった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
併しこの際の庄太郎にとっては、その考えが、天来てんらい福音ふくいんごとく有難いものに思われるのだった。そして、考えに考えた挙句あげく、結局彼はその計画を実行して見ることに腹を極めた。
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
成経 あの機知にみちた、天来てんらい猿楽さるがくを!
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
おびえきっている梅雪の心は、ふたたびギョッとして立ちすくんだけれど、ふと驚異きょういのものを見なおすとともに、これこそ天来てんらいのすくいか、地獄じごくほとけかとこおどりした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天来てんらいの奇想のように」、と形容した西人せいじんの句はとうていあてはまるまい。こう思う途端とたんに余の足はとまった。足がとまれば、いやになるまでそこにいる。いられるのは、幸福な人である。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかるに、天来てんらいたすけともいうべきか。わらわらと背後に迫って来た男どもは、意外にも
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)