大鉞おおまさかり)” の例文
二十名も来たろうか、稀れな大鉞おおまさかりげたのや、びた長柄ながえをかかえ込んだのが、赤い火光をうしろに背負い、黒々と立ちよどんで
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうしてこの部屋の出入り口に近い、片寄ったところには大蔵おほくらやつ右衛門うえもんが、大鉞おおまさかり砥石といしへかけて、ゴシゴシといでいた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
壁には、象を料理するのじゃないかと思うほどの大鉞おおまさかり大鋸おおのこぎり、さては小さい青竜刀せいりゅうとうほどもある肉切庖丁にくきりほうちょうなどが、燦爛さんらんたる光輝ひかりを放って掛っていた。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その前額のあたりを目がけて、例の大鉞おおまさかりの鋭い尖った鉄管を骨も砕けよとばかりに打ち込むものがあった。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
言いながら彦兵衛がまた一、二尺死骸をずらすと、下から出て来たのは血塗ちまみれの大鉞おおまさかりました刃が武者窓を洩れる陽を浴びて、浪の穂のようにきらりと光った。藤吉は笑い出した。
徐晃が得意の得物といえば、つねに持ち馴れた大鉞おおまさかりであった。みずから称して白焔斧びゃくえんぷといっている。それをふりかぶって文醜に当って行った。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つくり物らしい槍や長柄ながえや、大鉞おおまさかりなどをひっさげて、それらを時々宙で舞わし、踊りらしい所作などをした。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
肉屋の亭主は板塀に立て掛けてあった大鉞おおまさかりを取って私に示した。薪割まきわりを見るような道具だ。一方に五六寸ほどのとがった鉄管が附けてある。その柄には乾いた牛の血が附着していた。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
つねに重さ六十斤の大鉞おおまさかりを自由に使うという無双な豪傑ですし、胸中の武芸もまた、いにしえの廉頗れんぱ李牧りぼくに優るとも劣るものではありません。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大鉞おおまさかりを地について、その柄の石突きに両手を乗せ、その手の甲へ頤をのせ、黙然として動かなかった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)