大島紬おおしまつむぎ)” の例文
しかし更になお鹿児島県のものとして特筆されてよいのは「大島紬おおしまつむぎ」であります。奄美大島あまみおおしまは今は大隅おおすみの国に属していますが、元来は沖縄の一部でありました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
じみな蚊絣かがすり大島紬おおしまつむぎに同じ羽織をかさねた重吉が仔細しさいらしく咳嗽払せきばらいでもして、そろそろ禿げ上りかけたひたいでもでている様子を見ると、案外真面目まじめな夫婦らしく、十二
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
大島紬おおしまつむぎ被布ひふなどを着込んでどこかの大家たいけ御隠居ごいんきょさんとでもいいたいようないでたちなので、田舎の百姓家のこちらの母などとは大違いで、年もよっぽど若く見えた。
と渋い博多はかたの帯に大島紬おおしまつむぎの着流しで、それへ出て来た由良の伝吉は、苦み走った三十前後の年頃で、さすが船稼業だけあって、江戸前の遊び人と云ってもいい男前に見えた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あんたはんに見てもらいまよか」といって、衣装戸棚の中からいろんな衣類をそこへ取りひろげて見せたりした。大島紬おおしまつむぎそろった物やお召や夏の上布じょうふの好いものなどを数々持っていた。
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
中野君は大島紬おおしまつむぎたもとから魯西亜皮ロシアがわ巻莨入まきたばこいれを出しかけたが
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それが絹ハンケチを首に巻いて二重廻にじゅうまわしの下から大島紬おおしまつむぎの羽織を見せ、いやに香水をにおわせながら
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
今日名のある大島紬おおしまつむぎとか薩摩上布さつまじょうふ等呼ぶ微細な模様の絣はずっと後のもので、むしろ技巧にしたものに外なりません。沖縄自身のものは遥かに健全で確実で本格的な仕事です。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
迷亭は大島紬おおしまつむぎ古渡更紗こわたりさらさか何か重ねてすましている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)