大容おおよう)” の例文
むっちりと肥えた四十路よそじがらみのひとだった。幼子を抱いて、色褪いろあせた衣服もよけい着くずしているかたちだが、どこかには上流婦人らしい大容おおような風もある。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お媼さんは、男の様な大容おおような声を出して笑ったあとで、歯の抜け落ちた唇のくぼみを、もごりもごり、と動かし乍ら、し顔に、お爺さんと婆やの顔を見くらべた。
かやの生立 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と、遠くから、軽く、小次郎の会釈を、眼でうけたきりで、大容おおように行くてへ向いたまま、去ってしまった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なにやら如才ない手土産てみやげなどを婆に渡して、やや離れた椅子いすに腰をおろすと、大容おおように言ったものである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、道誉は大いにあわてたらしい色をかくして、大容おおように、ふてぶてしく、笑って退けた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長者のふうというか、ちょうは五十年配だが頗る大容おおような人柄に見える。あるいは義心の人に報ゆるに義心をもって接しようと努めているのかもわからない。灯はけて酒興もたけなわに入ると
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……どこやら大容おおような風、そして異相、まことにただならぬ者と、頻りにお気にかけておられしゆえ、それがしが推量にて、それこそ、忍び上洛中の足利貞氏の嫡子又太郎高氏にて候わん
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その人は、風とおしのよい一殿いちでんのすだれをかせて、時めく公卿らしく、大容おおように坐っていた。川をへだてた東山一帯の翠巒すいらんひさしにせまるほどだった。——座にはさきに来ていた客がいて
史進は瞬間、声も出ずにいる三人へ、大容おおようにまたいった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
忠顕は大容おおように三名を見て
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)