夕栄ゆふばえ)” の例文
旧字:夕榮
自分はぢつとランプの火影ほかげを眺めた。外には夕栄ゆふばえに染められた空と入江とが次第に蒼白く黄昏たそがれて行く。へやの中には石油のランプがいかにも軟な悲しい光を投げ始める。
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
新橋停車場しんばしステエションの大時計は四時をすぐること二分、東海道行の列車は既に客車のとびらして、機関車にけふりふかせつつ、三十余輛よりようつらねて蜿蜒えんえんとしてよこたはりたるが、真承まうけの秋の日影に夕栄ゆふばえして
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
燃えて/\かすれて消えて闇に入るその夕栄ゆふばえに似たらずや君
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
なにか見る、夕栄ゆふばえのひとみぎりむせ落日いりひ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
こずゑのしづく、夕栄ゆふばえも。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
わづらひかこれうらぶれか春のうすれ暮うするる夕栄ゆふばえを見る
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
夕栄ゆふばえあつ紅罌粟べにげしにかかくれて
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)