地盤じばん)” の例文
赤土あかつちの乾きが眼にも止まらぬ無数の小さな球となって放心ほうしんしたような広い地盤じばん上の層をなしている。一隅いちぐうに夏草の葉が光ってたくましく生えている。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
大旆たいはいってしまった。ここにおいてか、官兵衛が舌頭の無血攻略も、苦心の地盤じばん工作も、一朝のまに、すべてが画餅がべいのすがたに帰ってしまった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆきのためには、あるとしはおされてあやうくれそうになったこともあり、また、あるとしなつには、大雨おおあめあらわれて、もうすこしのことで、この地盤じばんくずれて
葉と幹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
掘ると、下から、青くて固い地盤じばんが出て来るよ。まるで燧石ひうちいしのやわらかいやつみたいだ。こいつは掘るのに、なかなか手間がかかる。しかし、そこまで掘れば、大体いい水が出るね
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一たび発すれば、是れ地盤じばんの震動である。何ものか震動する大地の上に立てようぞ?
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
瀬戸内せとうちには、村上、来島くるしま一族の水軍も味方にひかえ、大坂の本願寺衆とはかたく結び、摂津せっつそのほか所在の内応も少なくない。なんで元就もとなり公以来の固い地盤じばんゆるぎでもするものか。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこは密林みつりんのおくであったが、地盤じばんの岩石が露出ろしゅつしているため、一町四ほうほど樹木じゅもくがなく、平地はすずりのような黒石、け目くぼみは、いくすじにもわかれた、水が潺湲せんかんとしてながれていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)