圧迫あっぱく)” の例文
旧字:壓迫
それに将軍連が心ならずも調子を合わせ、正論を圧迫あっぱくしてとんでもない国論を作ってしまう。こうなると、まるでめちゃくちゃだよ。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
これはもとより金力の例ではありません、権力の他を威圧する説明になるのです。兄の個性が弟を圧迫あっぱくして無理に魚を釣らせるのですから。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ドノバンはいわゆるアマノジャクで、そのごうまんな米国ふうの気質きしつから、いつも富士男を圧迫あっぱくして自分が連盟の大将たいしょうになろうとするくせがある。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
なにかしら非常な強い圧迫あっぱくのためにさらに暗いところへ押し落とされて行くような気持ちになった。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
また社会的に発達している伝統的権威けんいによって、父は子をある程度まで圧迫あっぱくすることは出来得る。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
照彦てるひこ様もほかの生徒同様時おりかれらの圧迫あっぱくをまぬがれえなかった。なかんずく堀口という落第生は全級のもてあましものだった。不良分子は皆こいつの子分になっていた。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
このふゆかいな出来事で、しばらくわたしたちの気を転じさせたが、それがすむとまた圧迫あっぱく絶望ぜつぼうにおそわれた。それとともに死が近づいたという考えがのしかかってきた。
しかして勝敗も人の真価で計るべきものである。真の力ある人はいやゆる投げられても負けぬ。真の力がより以上の真の力のために圧迫あっぱくされて始めて負けたということになる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「独想ではない、厳然げんぜんたる事実なのだ、いいか」と辻永は圧迫あっぱくするような口調で云った。
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
みさきの村の分教場へ入学したその少しまえの三月十五日、その翌年彼らが二年生に進学したばかりの四月十六日、人間の解放をさけび、日本の改革を考える新らしい思想に政府の圧迫あっぱくが加えられ
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ついにその種子を圧迫あっぱくして急に押し出し、それを遠くへ飛ばすのである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
病室へはいるなり柳吉は怖い目で「どこイ行って来たんや」蝶子はたった一言、「死んだ」そして二人とも黙り込んで、しばらくは睨み合っていた。柳吉の冷やかな視線は、なぜか蝶子を圧迫あっぱくした。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
同時に、かれの胸の中では、感謝したいような気持ちと圧迫あっぱくされるような気持ちとが入りみだれた。かれはすぐには答えることができなかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
世田谷で空襲にせっしたが、防空ズキンをかぶって案外呑気でいた。これらで見ると、自然力的な圧迫あっぱくには堪え得るが、人間的圧迫には堪え得ない弱気よわきの性であろうと思った。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
「正三は承知さえすれば、忠義にも孝行にもなると同時に、自分の身も立ちます。けれども親や兄貴あにき権力けんりょく圧迫あっぱくしたんじゃなんにもなりません。自発的のところに値打ねうちがあるんです」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
はじめは宿屋の亭主もわたしたちに目をくれようともしなかった。けれども親方のもっともらしい様子がみごとにかれを圧迫あっぱくした。かれは女中に言いつけて、わたしたちを一間ひとまへ通すようにした。
「それで問題はないじゃありませんか。塾生が集まって来さえすれば、あとはどんな圧迫あっぱくがあっても、これまでどおりにやっていけばいいんです。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
いく時間かぎた。だんだん夜がふけるにしたがって、とりとめもない恐怖きょうふがわたしを圧迫あっぱくした。わたしは不安ふあんに感じたが、なぜわたしが、そう感じたのかわからない。なにをわたしはおそれているのか。
抵抗ていこうしないのを承知で圧迫あっぱくをくわえる。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
沈黙ちんもくがわたしを圧迫あっぱくした。