団欒まどい)” の例文
旧字:團欒
うごくなかれ。静かなること林のごとくあれ。——門ごとの守りの兵は、わけて長閑のどか団欒まどいして、敵近づくも居眠るがごとくしてあれ
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家族は自分達が団欒まどいをするのにも、来客に接するのにも洋間を使い、一日の大部分をそこで過すようにしていた。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
樵夫小屋を遥かのあなたに見て、林の中に桂子かつらこたちは、焚火たきびをたきながら団欒まどいしていた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
只今ただいまの楽しいお団欒まどいが、尽きない尽きない、幸福の泉のつぼであるようにと祈られます。
平塚明子(らいてう) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
わしをからかうように、じらすように、幸福をのせてゆく船、やがて恋しいふるさとの岸辺きしべに着く船、つかれた旅人はあたたかい団欒まどいに加わるうれしさに船を急がせているのだろう。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「いさかいは、そこから始まったのでございます。手前どもの団欒まどいに、そこのお二人が割り込んで見えなければ、悶着もめは起らなかったはずです。どうか正しいお裁きが願いたいもので……。」
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
「さあ、来やれ。そちがおらいでは座敷がさびしい。玉藻の前はきょうの団欒まどいの花じゃと皆も言うている。夜の灯に照り映えたら、その美しい顔が一段と光りかがやいて見えようぞ。来やれ、来やれ。あの賑わしい方へ……」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
やがて一堂は春風のような団欒まどいに賑わう。妻もまじり、子たちも集まってくる。玄徳もいつかその中に溶け入って、他愛ない家庭人となりきっていた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実ハソレヨリモ、春久ト颯子トガドンナ工合ニ接触スルカ、ソノ様子ガ見タカッタノデアルガ、団欒まどいノ中ニ加ワッテカラ三四十分モシタ時分、次第ニ脚カラ腰ノ周リガ冷エテ来ルノニ心ヅイタ。
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それがため御当家は百年の春がめぐったように、お館様も、おん奥の方も、御一門の若狭守わかさのかみ様も、宗業むねなり様も、朝に夜に、お越しなされて、あのとおり、奥でのお団欒まどい
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
磋磯之介は、思わず伸び上がって、その灯の下にいるあによめや小さいおいめいたちの団欒まどいを眼に描いた。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……柳生城この山に、消えずにあるこの団欒まどい燈火ともしびは、わしの眼には、むしろ奇蹟とも見える
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして直義なども来合せると、母や登子を笑わせて、団欒まどいに飽かない晩もあった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつて佐渡が、今夜のような夜伽よとぎの——君臣団欒まどいの折に、ふと
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)