喀血かくけつ)” の例文
まげは短くめてつてゐる。月題さかやきは薄い。一度喀血かくけつしたことがあつて、口の悪い男には青瓢箪あをべうたんと云はれたと云ふが、にもとうなづかれる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
然れども芙蓉は終に再び日本大詩人の面目を見ることを得ざりき。六月十二日彼は喀血かくけつせり、而して医は其不治なるを告げたり。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
一度車に乗せられて、病院へ運ばれた時は、堪へがたい虚咳からぜきの後で、刻むやうにして喀血かくけつしたことを話した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
主人の方は旅行中に喀血かくけつしてこのホテルにたどり着き、仰向けになつたまゝ長い間肺病の療養をしてゐるのださうです。生きるか死ぬかといふ病気であつたさうです。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
「駄目になつちやつたンですよ。こゝをやられて、昨夜も少し喀血かくけつしたンです……」
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
つらかったのは宮崎家の人となってから、れぬ上に、幼児は二人になり、竜介氏は喀血かくけつがつづいて——ただ一人のたよりの人は喀血がつづく容体で——その時の心持ちはと、あるとき
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
と同時におきみは急に咳込せきこみ、苦しさうに首を振つた。と、その口から、パツと眞赤なものがほとばしり出た。それはあごから胸へさつと掛つた。——おきみはつひに喀血かくけつしたのである。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
一寸ちよつとでもさわると、のまゝ、いきなり、しろかたつゝむで、ほゝから衣絵きぬゑさんのひさうである、とおもつたばかりでも、あゝ、滴々たら/\れる。……結綿ゆひわた鹿のやうに、喀血かくけつする咽喉のんどのやうに。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)