唐箕とうみ)” の例文
二番籾を唐箕とうみにかけて、その中の一番を「人のシダ」と呼び、これからは米の粉を取って、ネレゲその他の餅に作って食べる。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
戸を開けると、粉雪は唐箕とうみの口から吹飛ばされる稲埃のように、併しゆるやかに、灯縞ひじまの中を斜めに土間へ降り込んだ。
黒い地帯 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
苅った稲もきばしで扱き、ふるいにかけ、唐臼ですり、唐箕とうみにかけ、それから玄米とする。そんな面倒くさい、骨の折れる手数はいらなくなった。
浮動する地価 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
石油発動機が庭の真ん中で凄い響きを立てて唸り、稲扱いねこぎ万牙も唐箕とうみ摺臼すりうすも眼がまわるような早さで回転していた。
濁酒を恋う (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
唐箕とうみが穀粒をり分くるように、不幸は生きんと欲する者を一方に置き、死せんと欲する者を他方に置く。愛よりもさらに強い恐るべき生の法則である。
晴れた日には、農家の広場に唐箕とうみわしく回った。野からは刈り稲を満載まんさいした車がいく台となくやって来る。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
はッ、はッと吐く息は唐箕とうみの風のようであります。なんにしても、がんりきは腕が一本しかないのです。
あんた方は連枷からさをで麦を打ち、るのが仕事だったのに、今のものは機械で打ち、唐箕とうみを使っている。あんた方はお祭の日にしか休みを取らなかったのに、今のものは、それをぶつくさ言う
まま巨大な唐箕とうみか何かで吹きちらしているようだ。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
唐箕とうみのうなりはフウララフウ。
とにかくに摺臼すりうす唐箕とうみが採用せられて、玄米げんまいの俵が商品となるまでの間は、稲作作業の終局と考えられたのは、稲扱いねこきという仕事が済んだことであった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
麦倉むぎくらの婆の茶店にももう縁台は出ておらなかった。とちばんだ葉は小屋の屋根を埋めるばかりにもった。農家の庭に忙しかった唐箕とうみの音の絶えるころには、土手を渡る風はもう寒かった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
頭という名はよいけれども、何回も唐箕とうみ万石まんごくを通して、最後にふるいの上になる屑籾のことなのである。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)